俺のイッテンヨン《ノア後楽園》編
このブログ記事は、試合や興行の感想というより、2020年1月4日の夜にプロレスリング・ノアを選んだひとりのプオタの思いが時系列に並べられているといった具合です。試合あるいは興行全体の感想は後半に記してあります。
そして昨日からファンの間でノアが話題になってますが、あくまで当時の心情をもとに(ちゃんと当日に書き留めておいたiPhoneのメモを見つつ)書いたので、一件に関しては何も知らない体で話が進んでいます。何卒。
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2019年9月9日、プロレスリング・ノア後楽園ホール大会。なかなか衝撃的な発表があった。
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— プロレスリング・ノア (@noah_ghc) 2019年9月9日
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ノアが1月4日の夜に後楽園ホールで興行を打つと言う。
プロレスファンにとって1月4日といえば、新日本プロレスの「イッテンヨン」東京ドーム大会。
その真裏でノアが興行を打つと言う。それも東京ドームの隣の後楽園ホールで。
東京ドームの真裏でドームに負けない熱を生もうと試みたプロレス団体が近年居ただろうか。
僕はひとり熱くなっていた。
ー2018夏。アメリカのインディープロレスシーンでは史上最大規模の興行となったALL INの前日、前々日にとんでもない全部のせ興行をやってのけた「AAW」
ー2019春。世界最大のプロレス興行・WWEレッスルマニアより面白いものを作ろうと試みる選手や団体が集まった「裏レッスルマニア」
大手団体に「数」では負けてる。でも「質」では負けたくない。
俺たちにしか作れない面白さをファンに届けたい。
現地での観戦を通して、そんな中小プロレス団体の思いを僕は勝手に感じていた。
ALL IN直前のシカゴのAAWとニューヨークの裏レッスルマニア。この2つを肌で感じてきた僕は、ノアのイッテンヨンを放っておくことができなかった。
業界で飛び抜けた存在がいて、そこに対抗意識を燃やす団体がいる。日本でもこんなプロレス界が見たかった。
互いが互いを高め合い、面白さに磨きがかかる、そんな日本プロレス界であって欲しい。
挑戦に出たノアの姿勢を僕は買いたいと思った。
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2019年12月3日、プロレスリング・ノア後楽園ホール大会。中嶋勝彦とのデビュー15周年記念試合をムーンサルトプレスで制した潮崎豪がGHCヘビー級王者・清宮海斗に挑戦表明。
杉浦がずっと強さの象徴で居続けて、丸藤が負けても輝きを増すようになって、拳王が試合と言葉でファンの心を掴んでいて、清宮がエースとして立っていて……と思うと、もうちょっと潮崎出てきてくれって思う。
— 高専 (@Kosen_Wrestling) 2019年11月14日
ずっと潮崎豪が自己主張する日を待っていた。
僕はプロレスにハマりたての小学生の頃、ノアのレスラーたちに魅せられてきた。魅せられたのは、KENTAであり、青木篤志であり、杉浦貴であり、潮崎豪である。
自分が小さい頃に潮崎に魅了されただけに、最近の潮崎には歯痒ささえ感じていた。(その歯痒さもプオタの醍醐味なのだけど)
そんな潮崎が勝彦と15年の歴史が詰まった戦いをして、
ムーンサルトプレスで勝利し、
試合後にGHCヘビー獲得に動き出した。
かつて創設者にノアを託された男・潮崎vs新生ノアの顔・清宮のGHCヘビー級選手権試合が決定。
これ以上にないシチュエーション。
イッテンヨンにノアを選ぶにあたり、唯一の懸念材料であった「新日本のイッテンヨンでのKENTAのタイトルマッチ」をパスした僕は、ノアのイッテンヨンを学校の後輩・中西くんと観に行くことにした。
えらく前置きが長くなってしまったけど、ここからイッテンヨンノア後楽園大会当日の話を。
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2020年1月4日16時50分。水道橋駅に到着。
改札を出る前に、Haomingポップアップストアに立ち寄った。
プロレスを題材にしたアパレルブランド『Haoming(ハオミン)』が先月から水道橋駅構内にて、期間限定ストアをオープンしている。
僕「(キャップをはずして)お久しぶりです」
代表「お〜どうも」
僕はハオミンに4年前から通っている。代表には、顔と富山在住という情報を覚えてもらっている。
代表「この時間にここにいてドームは間に合うの?」
僕「いや、今日はノア後楽園を選んだので」
代表「(ニッコリして)…あのね、だと思った」
代表は、顔と「富山在住」だけでなく、僕の嗜好もわかってくれている。
30%オフで売られていたランディ・サベージのウエストポーチを購入。
代表「ありがとうね。また宜しくお願いします。ノア、楽しんで!」
---そうだよ。俺は1月4日というプロレスファンにとって特別な日にノア後楽園を選んだプロレスファンなんだよ。
これを読んでる人は「いちファンが背負い込みすぎだろ」と思うかもしれないけど、僕はこの時、プオタとしてそれくらいの使命感に駆られた。
少しだけ背筋を伸ばして、改札を出た。
17時00分。新日本プロレス東京ドーム大会開始時刻に、水道橋駅西口から東京ドームシティへと繋がる、いつもの橋を渡る。
小学生の頃、母に連れられて、初めてこの橋を渡った時は随分と高揚したものだけど、今となってはすっかり慣れたもの。
だけど、なんか今日だけはいつもと違う感じがする。
水道橋の街は、新日本プロレス東京ドーム大会『WRESTLE KINGDOM14』一色。
駅改札を出てすぐのNewDaysには、新日本ドーム特集が組まれたスポーツ新聞が売られていた。
後楽園ホール隣のローソンには、大きな大会パネルが設置されていた。
そういえば、池袋から秋葉原へ向かう時に乗った山手線の車内では、WRESTLE KINGDOM14のプロモーションビデオが流れていた。
---東京の街が、そして世界が新日本プロレス東京ドーム大会で賑わう今宵、僕はドームの隣でプロレスを観るんだ。
ローソンを通り過ぎて、階段を下りると、そこは後楽園ホール。
開場40分前にも関わらず、既に行列ができている。
5階にある後楽園ホールから1階の会場外にまで列ができているわけだから、相当長い列である。通い慣れた後楽園ホールだけど、こんな光景を見るのは初めて。
高揚を抑えられなくて、無駄に早く会場に到着してしまうというのは、地方のプロレスファンあるある。この現象を後楽園ホールで見られるとは。
後楽園ホール隣の東京ドーム前は閑散としていた。耳を澄ませば、中の歓声が薄っすらと聞こえるような聞こえないような。
---よし、ノアを見るぞ。
開始時刻が迫るに連れて、ノア後楽園に馳せる想いが強まっていく。
17時50分。後楽園ホール入場。
展示場グッズ売店を通り抜け、フード売店前でフォロワーさんたちと自然に合流。ここで後輩・中西くんとも合流。レモンサワーを片手に今日の興行とは関係ないプロレストークで盛り上がる。
18時20分。着席。
中西くんと話していると、会場内に『グランドエスケープ』が流れ始める。
「天気の子の曲だ」
イントロではそのくらいにしか思わなかったけど、サビで一気に引き込まれる。
サビがめっちゃ今のノアなんだよな。
— 高専 (@Kosen_Wrestling) 2020年1月6日
「夢に僕らで帆を張って」なんてまさに“方舟”じゃん。
「来るべき日のために夜を越えて」とか未来に目を向けてるノアの今日の姿勢じゃん。
「肩を組んだ」とか今のみんなですやん。#noah_ghc https://t.co/pcUAAPdnOC pic.twitter.com/yIVKn1flg5
怖くないわけない でも止まんない
ピンチの先回りしたって 僕らじゃしょうがない
僕らの恋が言う 声が言う
「行け」という
新生ノア。
20周年イヤー1発目の興行。
新日ドームの裏での興行。
全てが重なった。RADWIMPSはノアに楽曲提供したんだっけ。
一気に期待値が高まった。
印象に残った試合の感想を。
第4試合
拳王&稲村愛輝vs鈴木秀樹&岡田欣也
初・生稲村。良かった。序盤で岡田にさらっとヘッドシザースを仕掛けた時の鍛え上げられた脚が凄かった。
岡田はガッチリハマる前に抜け出したけど、あの稲村のヘッドシザースに一度ハマればどうなることやら。ファンが特に意識しない部分も説得力があるのは凄い。
拳王vs鈴木秀樹は、ジュニア時代のKENTAvs永田裕志を彷彿とさせた。
食ってかかる拳王がKENTAに、「嫌いじゃないよ」スタンスの鈴木秀樹が永田裕志に見えた。
鈴木秀樹が青パンだったのもまた永田さんっぽかった。
危険な空気を漂わせながらスタスタと帰る鈴木秀樹。追いかける拳王。「拳王さん…」と呟きながら後を追う稲村。
そしてカーテンの奥に姿を消した後もバックステージから聞こえる怒号。最高だった。
第5試合
中西くん「ファイヤーバードですかね?」
僕「いや、これシューティングスターかもしれんぞ」
僕&中西「うおおおおお!!!」
これに尽きる。
2019年、獣神サンダー・ライガーと戦いたいと訴え続けるも、対戦が実現しなかった稔がシューティングスタープレスを披露。
「1月4日にドームの裏で戦ってること」
「そのドームでライガーが引退すること」
「稔とライガーの距離感」
現状を踏まえると、これ以上にない感謝の表し方だなと。
この試合後に「シューティングスター、興奮しました」と伝えに、田中稔売店へ行こうと思った。
…だけど、シューティングスタープレス披露という、これ以上にない最高のメッセージを観た後に、わざわざ本人の言葉を聞きたくない気もしたので売店はスルー。それほど熱かった。
第6試合
試合時間こそ短かったものの、2人の強さが詰まった試合。
冷酷な蹴りを連打する勝彦と蹴られてもHPが減らないエルガン。2人とも強かった。
初めて夜行バスに乗って地元の友達と観に行った2015年G1後楽園でのvs後藤洋央紀と昨夏の大日本後楽園でのvs関本大介。
エルガン×後楽園には、色々と思い出があるので、エルガンが勝った時は本当に嬉しかった。
https://t.co/iiRHAyOiHM pic.twitter.com/XXZDieDNng
— 中西 (@Nakanishi8023) 2020年1月14日
試合後に「ビッグマイク」コールを送ったら、指してくれた。
イッテンゴでGHCヘビーに挑戦すると勝手に確信。
第8試合
HAYATAvs小川良成
ただただ強い小川と会場の小川応援態勢。生観戦したプロレスファンの勝利マッチ。
僕は2010年からノアを観てるけど、小川良成のことを熱烈に応援していた時期は正直ない。
だけど、何年もこの時を待っていたかのように会場で小川良成を応援している僕がいた。
ここぞという時に客を味方にするのは、小川良成最大のテクニックなのかもしれない。
面白かったし、嬉しかった。そんな試合。
セミファイナル
GHCナショナル選手権試合
杉浦貴vsマサ北宮
序盤のタックル合戦から興奮。執拗な○○合戦で始まる試合が好きな僕にとっては好物そのもの。
とにかく北宮が良かった。
僕は最近の形式的な北宮がハッキリ言って嫌いだったんけど、この日は試合中の表情が格段に良かった。監獄固めしながらの武者震いも勝ちへの執念がちゃんと伝わってきた。
そして終盤のエルボー合戦。北宮の放つエルボーの音が凄まじかった。
音と重さが比例するのか知らないけど、杉浦のエルボーよりずっと重く見えた。
「今日の北宮強え!」
だけどそう思ってるのも束の間。北宮の凄いエルボーを食らっても倒れない…というかむしろ蘇る杉浦。
ここで僕は、ふと「北宮、昔の杉浦に体型似てるな」と思った。今の北宮の太り方が2009年から2011年にかけて、GHCヘビー級王者としてノアを引っ張っていた頃の杉浦の太り方にちょっと似てるなと。
そこからはもう杉浦が過去の自分をぶっ倒してるようにしか見えなくなった。杉浦vs杉浦。
「今日の北宮はめちゃくちゃいいぞ」と思いながら見てたけど、気がつけば杉浦に魅了されていた。
最後は雪崩式オリンピック予選スラム。
杉浦が初めてGHCヘビーを奪取した時の技。プロレスにハマりたての頃、テレビで観ていた技。
この技を生で観られることに喜びを覚えるとともに、「あの頃と変わらない技で、あの頃の自分(=北宮)を倒すって、今が全盛期ってことじゃん」と勝手に思って勝手に感動した。
メインイベント
GHCヘビー級選手権試合
緑の新コスチュームで登場した潮崎。これがあったか。しかも見れば見るほど三沢を彷彿とさせるデザイン。
潮崎が出てきた時、興奮しすぎて手元のコーラを全部こぼした。
✔︎ロングタイツ
— 高専 (@Kosen_Wrestling) 2020年1月4日
✔︎タイツの銀のライン
✔︎リングシューズ
✔︎ガウン
✔︎(最近アームカバーくらい長いの使ってたのに)短めのエルボーサポーター
ノアは潮崎豪なんだ!!#noah_ghc https://t.co/rMC13liSka pic.twitter.com/lKZ8fqFRJu
憧れグリーンvs本物グリーン。
「今日の潮崎は信じていい日だ」
トペ!
パワボム!
リミブレ!
豪腕!
最後はムーンサルトプレスで勝利。
ノアは「美学のある闘い」をキャッチフレーズにしている。僕はこの言葉に乗れなかった。
「やる側が『美学』を持つのはわかる。だけど、それは観る側への謳い文句として使う言葉ではなくないか?」と思っていた。
僕は10年間プロレスを見続けてきたけど、美学など知らない。
でも、ノアが「潮崎豪のムーンサルトプレスこそが美学です」と言うなら、納得できる気がする。
それはフォームが綺麗だからという理由ではなく(もちろんそれもあるけど)、潮崎のムーンサルトにはみんなの夢と希望が詰まってるから。
潮崎がコーナーから舞う瞬間、潮崎の思いとファンの思いが重なる。
1月4日の夜に舞ったあのムーンサルトプレスは、たぶん美学。
師匠・小橋建太からベルトを受け取る潮崎。
この時、退場する清宮に大「海斗」コールが発生。なんて素晴らしいファンなんだと思った。
「俺がノアだ!」という最強フレーズを残した後、潮崎はたっぷりと時間をかけて退場。
マイクなし「ありがとーーーーっ!!」頂きました!!!
— 高専 (@Kosen_Wrestling) 2020年1月4日
こちらこそありがとう!!!!#noah_ghc pic.twitter.com/DojMKddYTi
22時20分。興行終了。
強いヤツが勝つ、3時間50分の興行。試合後はグッズ売店もなし。
長かったけど、1月4日の夜にプロレスファンに向けて発信するパッケージとしては、意義ある長時間興行だったと思う。
後半のタイトルマッチは言わずもがな。前半は前半で選手たちの個性がちゃんと出ていた。
本当に面白い興行だった。20周年イヤー1発目からこんな興行をやってのけて、ノアは今年一年どうするんだと心配になる程。自分で自分にハードルを課したなと。
だけど超えてくれるでしょう。昨年11月の両国大会が終わった時点で、誰が潮崎豪によるハッピーエンドを読んでいたか。誰が大「小川」コールで包まれるイッテンヨンを読んでいたか。
僕らの期待に応えてくれるどころか、軽く超えてくれるでしょう。
イッテンヨンにノアを選んでよかった。
おめでとう、潮崎!
ありがとう、ノア!
これからもよろしく!